※この記事はWu et al. BMC Oral Health (2024) 24:1274「Association between magnesium depletion score and periodontitis in US adults: results from NHANES 2009–2014」を参考に執筆されています。
「歯周病」と聞くと、歯みがきの習慣や歯科医院での定期検診を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし近年、歯周病の発症・進行に深く関わる要因として、ある「ミネラル不足」が科学的な注目を集めています。それが、マグネシウムです。
マグネシウムは、体内で800種類以上の酵素反応に関わり、筋肉・神経・骨・エネルギー代謝など、あらゆる生命活動を支える必須ミネラルです。しかし現代の食生活や薬の服用習慣、腎機能の変化などにより、多くの人が慢性的な不足状態に陥りやすくなっています。
今回ご紹介するのは、アメリカの大規模健康調査「NHANES(全米健康栄養調査)」の2009〜2014年データを分析した研究(Wu et al., BMC Oral Health, 2024)です。この研究では、体内のマグネシウム枯渇度を数値化した独自の指標「MDS(マグネシウム枯渇スコア)」を用いて、8,628名のデータを解析。マグネシウム不足が深刻なグループほど、中等度から重度の歯周病にかかっている割合が顕著に高いことが科学的に示されました。
本記事では、その研究内容を詳しく読み解きながら、マグネシウムが歯の健康を守るメカニズム、不足を招く4つの要因、そして今日から始められる具体的な対策まで、わかりやすく解説していきます。
マグネシウムが歯の健康を守る「2つの重要な役割」

マグネシウムは、私たちの健康を根底から支える重要なミネラルです。単に骨を構成するだけでなく、歯の健康、特に歯周病の予防において決定的な役割を果たしています。ここでは、研究論文(Wu et al., 2024)に基づき、その具体的な2つの役割を専門的な知見から詳しく解説します。
ポイント1. 体内の800以上の化学反応を助け、歯ぐきの炎症を抑える

マグネシウムは、体内で800種類以上の酵素(体内の化学反応をスムーズに進めるタンパク質)の働きを助ける「補助役(コファクター)」として活動しています。具体的には、筋肉や臓器の元となる「タンパク質の合成」、遺伝情報に関わる「DNAやRNAの合成」、食事からエネルギーを作り出す「糖解(とうかい:糖を分解すること)」や「酸化リン酸化(細胞内でエネルギーを生み出す仕組み)」など、生命維持に不可欠なあらゆるプロセスに関与しています。
マグネシウムが十分に足りていると、体内の炎症を抑える防波壁として機能します。しかし、不足すると体に深刻な悪影響を及ぼし、歯周病を悪化させる連鎖が起こります。具体的には以下の3つのメカニズムが明らかになっています。
- 「活性酸素」による組織の破壊:マグネシウム不足は「活性酸素(細胞を傷つける攻撃性の高い酸素)」の発生を刺激します。過剰な活性酸素は、歯ぐきの細胞のDNAやタンパク質、脂質を傷つけ、結果として歯を支える組織そのものを壊してしまいます。
- 炎症性物質の放出:不足状態では「炎症性サイトカイン(炎症を広めるサインを出す物質)」が大量に放出され、歯ぐき全体の炎症が慢性的に持続しやすくなります。
- 細胞の「老化現象(SASP)」の連鎖:低マグネシウム状態は「NF-κB(炎症反応をスイッチオンにするタンパク質)」を活性化させ、細胞の老化に伴う有害物質の分泌(SASP:細胞老化関連分泌表現型)を引き起こします。これにより、周囲の正常な細胞まで次々と老化し、炎症が慢性化してしまいます。
つまり、マグネシウムが不足すると、歯ぐきを守るはずの防衛機能が次々と崩壊し、歯周病菌が引き起こす炎症が拡大・長期化するリスクが高まるのです。日々の食事や生活習慣によってこのミネラルが慢性的に失われていることを、多くの人はほとんど気づかないまま過ごしています。口腔内の健康を守るうえで、全身栄養の視点から「マグネシウムの充足度」を意識することが、これからの予防歯科において非常に重要な視点となっています。
ポイント2. 歯を支える骨の再生をサポートする
マグネシウムは、歯を支える土台である「歯槽骨(しそうこつ)」の再生と修復に深く関わっています。骨は常に新しく作られる「形成」と、古くなって溶かされる「吸収」を繰り返していますが、マグネシウムはこのバランスを整える司令塔のような役割を担います。
- 「Wntシグナル」の活性化:最新の研究では、マグネシウムが「Wntシグナル(骨を作る細胞を増やすための重要な伝達ルート)」を活性化させることが示されています。このルートが正常に働くと、骨を作る「骨芽細胞(こつがさいぼう)」の活動が促進されます。
- 骨を溶かす細胞の抑制:同時に、マグネシウムは骨を溶かしてしまう「破骨細胞(はこつさいぼう)」の活動を抑える働きも持ちます。この「作る働きを強め、壊す働きを抑える」二段構えの作用が、歯周病で失われがちな骨の健康を守ります。
- ビタミンD・K2との連携:マグネシウムは、骨の健康に欠かせない「ビタミンD」を体内で使える形にするための必須成分です。ビタミンDが十分に機能することで、重度の歯周病リスクが大幅に低下することがわかっています。なお、本研究の範囲外となりますが、骨の健康を語る上でビタミンK2の役割も見逃せません。ビタミンK2は、カルシウムを血管などの軟組織ではなく、骨や歯槽骨へと適切に誘導する働きを持ちます。マグネシウム・ビタミンD・ビタミンK2の3つを意識的に摂ることが、歯を支える骨の健康を総合的に守る上でより効果的と考えられています。
歯周病が進行すると、歯ぐきだけでなく歯を支える骨(歯槽骨)が溶け出し、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。マグネシウムはこの「骨の破壊」を防ぎ、「骨の再生」を後押しすることで、歯周病の進行を根本から食い止める可能性を持っています。カルシウムやビタミンDだけに注目しがちな骨の健康においても、マグネシウムという「縁の下の力持ち」が不可欠な存在であることを、ぜひ覚えておいてください。
知らぬ間にマグネシウム不足を招く可能性がある「4つの要因」

マグネシウムは体内で非常に重要な役割を果たしていますが、実は多くの現代人が不足状態にあります。今回紹介する研究(Wu et al., 2024)では、体内のマグネシウムがどれだけ枯渇しているかを数値化した「MDS(マグネシウム枯渇スコア)」という指標を用い、不足を招く「4つの要因」を特定しています。それぞれの要因を詳しく見ていきましょう。
要因1. 利尿薬や胃薬(プロトンポンプ阻害薬)の使用
日常的に服用している薬が、意図せずマグネシウムを体外へ追い出してしまうことがあります。
- 利尿薬(1点):血圧を下げるためなどに使われる、尿の量を増やす薬です。尿と一緒にマグネシウムも排出されやすくなります。
- プロトンポンプ阻害薬(1点):胃酸の分泌を強力に抑える胃薬です。逆流性食道炎や胃潰瘍などに処方されることが多いこの薬の長期服用は、腸からのマグネシウム吸収を妨げることが科学的に知られています。
特に長期間にわたって服用している方は、知らないうちにマグネシウムが慢性的に失われている可能性があります。薬の効果を否定するわけではありませんが、服用中の薬がマグネシウムに与える影響を主治医に相談することが、全身の健康管理として重要です。
要因2. 腎臓の機能低下
腎臓は血液中の老廃物をろ過し、必要なミネラルを再び体内に取り込む(再吸収する)重要な臓器です。腎臓の働きを示す「eGFR(推算糸球体ろ過量)」という数値が低下すると、マグネシウムの再吸収がうまくいかなくなります。
| eGFRの数値(腎臓のろ過能力) | MDS(不足スコア)の加算 |
|---|---|
| 90 mL/min/1.73m² 以上(正常) | 0点 |
| 60〜90 mL/min/1.73m²(軽度低下) | 1点 |
| 60 mL/min/1.73m² 未満(中等度以上の低下) | 2点 |
eGFRは、血液中の「血清クレアチニン値(筋肉から出る老廃物)」、年齢、性別、人種を用いた複雑な数式(Jaffe法など)によって算出されます。健康診断でeGFRの低下を指摘されたことがある方は、腎臓由来のマグネシウム不足に注意が必要です。
要因3. 過度な飲酒習慣
過度な飲酒は、マグネシウムの排泄を促し、体内の蓄えを空っぽにしてしまう大きな要因です。研究では以下の基準を「重度の飲酒」と定義しています。
- 女性:1日1杯を超える飲酒
- 男性:1日2杯を超える飲酒
これらに該当する場合、MDS(不足スコア)として「1点」が加算されます。「毎晩ビールを1〜2本」という習慣でも、積み重なれば長期的なマグネシウム不足につながる可能性があります。飲酒量の見直しは、歯周病予防の観点からも重要な生活習慣の改善ポイントです。
要因4. 毎日の食事からの摂取不足
加工食品への依存や野菜不足などの食生活も、慢性的なマグネシウム不足を招きます。今回の調査対象となった8,628人のデータを見ると、MDSが高いグループほど、食事からのマグネシウム摂取量が顕著に低く(1日平均約276mg)、不足がないグループの平均318mgと比べて有意に少ないという結果が出ています。
この数十mgの差は小さく見えるかもしれませんが、毎日・何年にもわたって積み重なれば、歯槽骨の密度や歯ぐきの炎症状態に着実な差をもたらす可能性があります。
【研究プロセス:MDSと歯周病の関係調査】この研究(NHANES 2009〜2014)では、以下の厳しい基準で正確なデータを抽出しました。
- 対象者:30歳以上のアメリカ人14,556名から開始。
- 除外項目:口腔検査が不完全な人(3,873名)、MDSデータが欠けている人(1,993名)、極端なエネルギー摂取量(1日500〜5,000kcal以外)の人(62名)を除外。
- 最終サンプル:8,628名のデータを詳細に分析。
この大規模調査により、上記4要因による「マグネシウム不足」が深刻な人ほど、中等度から重度の歯周病にかかっている割合が高い(不足なし:32.37%に対し、不足深刻:48.99%)ことが科学的に証明されました。
なお、本研究のMDSには含まれていませんが、栄養学的にはマグネシウム不足を招く要因として「糖分の過剰摂取」も見過ごせません。糖分(特に精製された砂糖や清涼飲料水)を大量に摂取すると、血糖値の急上昇に伴いインスリンが多く分泌され、腎臓からのマグネシウム排出(尿中排泄)が促進されることが知られています。さらに、糖の代謝そのものにもマグネシウムが消費されるため、甘いものを摂れば摂るほど体内のマグネシウムが急速に失われていく、という悪循環が生まれやすくなります。利尿薬やPPI、腎機能の低下が「慢性的にじわじわ失われる」要因だとすれば、糖分の過剰摂取は「日々の食生活の中で見落とされやすい、急速な消耗要因」と言えるでしょう。
最新の研究データが示す歯周病との「2つの関係性」

マグネシウムの不足がどのように歯周病と関わっているのか、最新の科学的知見に基づき解説します。アメリカで行われた大規模な調査「NHANES(全米健康栄養調査)」のデータを分析した研究(2009〜2014年分)から、見逃せない事実が明らかになりました。
事実1. マグネシウムが足りないほど、中等度から重度の歯周病になりやすい
この研究では、30歳以上のアメリカ人男女を対象に、体内のマグネシウムがどれくらい足りていないかを「MDS(マグネシウム枯渇スコア)」という指標を使って評価しました。MDSは、以下の4つの項目をポイント化して合計した数値です。
- 利尿薬(尿を出しやすくする薬)の使用:1点
- プロトンポンプ阻害薬(胃酸を抑える薬)の使用:1点
- 腎機能(血液をきれいにする働き)の低下(eGFRの数値):1点または2点
- 重度の飲酒習慣:1点
調査のプロセスは非常に厳格で、最初に30,468名の参加者候補から、30歳未満の15,912名を除外。さらに、口腔検査が不完全な3,873名、MDS算出に必要なデータが欠けている1,993名、1日の摂取エネルギーが極端に多い、または少ない(500〜5,000kcal以外)62名を除き、最終的に8,628名のデータが分析に使用されました。
この8,628名を「マグネシウムが足りている(MDS=0)」から「深刻な不足(MDS>2)」までの4グループに分けたところ、不足が深刻になるにつれて、中等度から重度の歯周病にかかっている人の割合が明らかに増えていくことが確認されました。
| マグネシウム不足の状態 | MDSスコア | 中等度・重度歯周病の割合 |
|---|---|---|
| 不足なし | 0点 | 32.37% |
| 軽度の不足 | 1点 | 36.53% |
| 中等度の不足 | 2点 | 43.44% |
| 深刻な不足 | 2点超 | 48.99% |
このデータは非常に明確なパターンを示しています。マグネシウムが足りている人の歯周病罹患率が約32%であるのに対し、深刻な不足を抱えるグループでは約49%にまで上昇。つまり、体内のマグネシウムが枯渇している人ほど、歯周病が悪化しているという強い関連性が科学的に示されました。
事実2. 不足が深刻なグループは、健康な人に比べ歯周病リスクが約2倍になる
次に研究チームは、統計的な手法を用いて「マグネシウム不足がどれくらい歯周病のリスクを高めるか」を数値化しました。この際に使われるのが「OR(オッズ比:ある現象の起こりやすさを表す数値)」です。
まず、他の条件を考慮しない単純な比較(未調整モデル)では、マグネシウムが足りている人と比較して、最も不足しているグループ(MDS>2)の歯周病リスクは2.01倍という極めて高い数値でした。
さらに、年齢・性別・人種だけでなく、歯周病に影響を与えそうな以下の多くの要因(調整因子)を考慮に入れて再計算を行いました。
- 生活習慣・経済状況:収入、教育レベル、喫煙習慣、運動量(仕事やレジャーでの活動)。
- 健康状態:肥満度(BMI)、糖尿病の有無、高血圧の有無。
- 食事:毎日の食事から摂っているマグネシウムの量。
これらの条件をすべて揃えて分析しても、マグネシウムが最も不足しているグループは、足りているグループに比べて歯周病リスクが1.35倍高いという結果になりました。統計学的に「P値(結果が偶然である確率)が0.05未満」であれば信頼できるとされますが、この結果はP=0.03であり、マグネシウム不足が歯周病の独立したリスク要因であることが証明されたのです。
さらに、より深刻な「ステージIII/IV」と呼ばれる重い歯周病に限定した分析(感度分析)でも、同様にマグネシウム不足との強い関連が見られました。不足が深刻なグループは、調整後でも重度の歯周病リスクが1.34倍(P=0.04)高いことが示されています。
歯の健康を維持するために今日から意識したい「2つの対策」

研究データが示す通り、マグネシウム不足は歯周病を悪化させる大きな要因です。では、具体的にどのような対策を講じるべきでしょうか。研究論文(Wu et al., 2024)が示唆する、科学的根拠に基づいた「2つの対策」を詳しく解説します。
ステップ1. マグネシウムを多く含む食品を日々の食事に取り入れる
まず取り組むべきは、毎日の食事から摂取するマグネシウムの量を増やすことです。論文でも、食事からのマグネシウム摂取量が多い人ほど歯周病のリスクが低いという過去の研究データ(Liら、2022年など)が紹介されています。
具体的には、イギリスの大規模データベース(UK Biobank)を用いた9,476名を対象とした調査においても、マグネシウムの摂取量が多いほど、歯周病のリスクが低下することが示されています。また、血中(正確には血清:血液を固まらせて上澄みを取り出したもの)のマグネシウム濃度が低い人ほど、「PPD(歯周ポケットの深さ)」が深く、「AL(アタッチメントロス:歯ぐきが歯から剥がれてしまうこと)」が深刻で、残っている歯の数も少ないという報告もあります。
今回のNHANESの調査データでも、マグネシウム不足が深刻なグループ(MDS>2)は、1日の食事からのマグネシウム摂取量が平均276.06mgと、不足がないグループの318.04mgに比べて有意に低いことが判明しています。この数十mgの差が、長い年月をかけて歯の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。
マグネシウムが豊富な食材として、論文内でも言及されている以下のような食品を積極的に日常食に取り入れることが推奨されます。
| 食品カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 海藻類 | わかめ、ひじき、昆布、のり |
| 豆類 | 大豆、黒豆、枝豆、納豆 |
| 全粒穀物 | 玄米、全粒粉パン、オートミール |
| ナッツ・種実類 | アーモンド、カボチャの種、ごま |
| 緑黄色野菜 | ほうれん草、小松菜、ブロッコリー |
食事からの摂取を増やすことは、マグネシウムが持つ「炎症を抑える働き」や「骨の再生を助ける働き」を最大限に引き出すための第一歩です。特定の食品だけに頼るのではなく、毎日の食事の中でバランスよく無理なく取り入れていくことが、長期的な継続のコツです。
ステップ2. 自分の健康状態や薬の使用状況を専門家に相談する
食事に気をつけるだけでなく、自分の体がマグネシウムを「失いやすい状態」にないかを確認し、必要に応じて医師や歯科医師に相談することが重要です。
なぜ専門家への相談が必要かというと、一般的に行われる「血液検査によるマグネシウム濃度の測定」だけでは、本当の不足状態を見逃してしまう可能性があるからです。論文によれば、血中のマグネシウムは体全体の総量のわずか0.8%しか占めていません。そのため、血液検査の結果が正常であっても、骨や細胞の中ではマグネシウムが枯渇している場合があるのです。
一方で、今回の研究で使われた「MDS(マグネシウム枯渇スコア)」は、血液検査よりも正確に体内の不足状態を予測できることが示されています。統計的な精度の高さを示す「AUC(予測の正確さを表す指標:1に近いほど正確)」を比較すると、以下のようになります。
- MDS(今回の指標):0.60
- 血清マグネシウム検査:0.58
- 尿中マグネシウム検査:0.58
MDSが最も高い精度を示しており、単なる血液検査よりも「薬の使用歴」「腎臓の状態」「飲酒習慣」を総合的に判断する方が、歯周病リスクの予測に有効であると言えます。特に以下の項目に当てはまる方は、マグネシウムが慢性的に不足している可能性が高いと言えます。
- 薬の服用:高血圧のための「利尿薬」や、逆流性食道炎などのための「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」を長期的に飲んでいる場合。
- 腎機能の低下:健康診断で「eGFR」の数値が低いと指摘されたことがある場合。
- 飲酒習慣:男性なら1日3杯以上、女性なら2杯以上のお酒を日常的に飲んでいる場合。
これらに該当し、さらに歯ぐきの腫れや出血が気になる方は、歯科医院での治療と併せて、主治医に「薬の影響によるマグネシウム不足の可能性」について相談してみることをお勧めします。
あわせて意識したいのが、糖分の摂取量です。マグネシウムが豊富な食品を取り入れても、清涼飲料水やお菓子などで糖分を多く摂ってしまうと、インスリンの作用によってマグネシウムが尿中に排出されやすくなり、せっかくの摂取効果が相殺されてしまう可能性があります。「マグネシウムを足す」と同時に「糖分で失わない」という両輪の意識が、不足を防ぐ近道です。
まとめ

今回ご紹介した研究(Wu et al., BMC Oral Health, 2024)は、アメリカ人8,628名の大規模データを用いて、体内のマグネシウム枯渇度が高い人ほど、中等度から重度の歯周病を抱えている割合が高いことを科学的に証明したものです。マグネシウムが不足すると、歯ぐきの炎症が慢性化し、歯を支える骨(歯槽骨)の再生も妨げられます。これは、単なる「栄養不足」ではなく、歯周病という病気の進行に直接関与する問題として受け止める必要があります。
不足の原因は、利尿薬・胃薬の長期服用、腎機能の低下、飲酒習慣、食事内容の偏りと多岐にわたりますが、中でも見過ごされがちなのが日常的な糖分の過剰摂取です。甘い飲み物やお菓子を習慣的に摂取している方は、知らぬ間にマグネシウムを急速に消耗している可能性があります。
今日からできる対策は、海藻類・豆類・全粒穀物・ナッツ類などマグネシウムを豊富に含む食品を日常食に取り入れることから始められます。加えて、薬の服用状況や腎機能について医師や歯科医師に相談することで、より包括的なリスク管理が可能になります。
「歯の健康は全身の健康につながる」とよく言われますが、その逆もまた然りです。栄養状態・生活習慣・全身の健康状態を整えることが、口腔環境を守る土台となります。毎日の食事と生活習慣の中に「マグネシウム」という視点を加えることが、これからの予防歯科の新たなヒントになるかもしれません。
参考・引用文献
参照:Wu et al. BMC Oral Health (2024) 24:1274「Association between magnesium depletion score and periodontitis in US adults: results from NHANES 2009–2014」